質問
父が亡くなりました。
父の息子である私たち兄弟3人のうち、私だけが借金を相続するように遺言書に書かれています。私だけが父の借金を支払わなければならないのですか?
回答
なかなか厳しい遺言書です。もしこの遺言書通りに3兄弟が相続したとすると、以下のようになります。
まず、質問のような遺言書があったとしても、債権者はあすなろ君以外の相続人に対し1円も請求できないわけではありません。債権者は、あすなろ君に対し、法律で決められた相続の割合に応じて(今回は1/3です)請求し、他の相続人に対し残りの2/3を請求してよいことになります。
その理屈は、以下のとおりです。
何人かいる相続人のうち、1人だけに借金などの債務を単独で相続させることが許されるなら、支払能力のない人に債務を集中することもあり得ることとなります。そうなれば、被相続人の債権者は、相続人からきちんと支払ってもらえるかわからない、極めて不安定な地位に置かれることとなります。法は、このような勝手を許してはいません。
すなわち、大審院昭和5年12月4日付決定は、被相続人の債務は、債権者との関係では、相続分の割合で相続人の間に分割されるとしています。よって、債権者は、遺言書や遺産分割協議の内容にかかわらず、各相続人に対し、法定相続分の割合で弁済を請求できます。
あと、遺留分の請求(民法1028条)ができるとか、相続放棄(民法915条)した方がよいとかいうことも言いたいのですが、それはまたいずれお話ししたいと思います。