2013年10月29日

あすなろ君、相続する

ブログマンガ5回完成.jpg
質問
 父が亡くなりました。
 父の息子である私たち兄弟3人のうち、私だけが借金を相続するように遺言書に書かれています。私だけが父の借金を支払わなければならないのですか?

回答
 なかなか厳しい遺言書です。もしこの遺言書通りに3兄弟が相続したとすると、以下のようになります。
 まず、質問のような遺言書があったとしても、債権者はあすなろ君以外の相続人に対し1円も請求できないわけではありません。債権者は、あすなろ君に対し、法律で決められた相続の割合に応じて(今回は1/3です)請求し、他の相続人に対し残りの2/3を請求してよいことになります。
 その理屈は、以下のとおりです。
 何人かいる相続人のうち、1人だけに借金などの債務を単独で相続させることが許されるなら、支払能力のない人に債務を集中することもあり得ることとなります。そうなれば、被相続人の債権者は、相続人からきちんと支払ってもらえるかわからない、極めて不安定な地位に置かれることとなります。法は、このような勝手を許してはいません。
 すなわち、大審院昭和5年12月4日付決定は、被相続人の債務は、債権者との関係では、相続分の割合で相続人の間に分割されるとしています。よって、債権者は、遺言書や遺産分割協議の内容にかかわらず、各相続人に対し、法定相続分の割合で弁済を請求できます。
 あと、遺留分の請求(民法1028条)ができるとか、相続放棄(民法915条)した方がよいとかいうことも言いたいのですが、それはまたいずれお話ししたいと思います。
posted by asunaro at 12:00 | 家庭の問題

2013年10月18日

あすなろ君離婚の危機

ブログ漫画4回.jpg
質問
 夫が浮気をしています。離婚したいし、損害賠償も請求したいです。

回答
 民法770条は、裁判上の離婚原因の第一番目に、「不貞な行為」を挙げています。
 「不貞行為」とは、婚姻関係にある者同士が負う、配偶者以外の相手との性的関係をもたない義務(貞操義務)に違反する行為です。最高裁昭和48年11月15日第1小法廷判決は、「民法770条1項1号所定の『配偶者に不貞な行為があったとき』とは、配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいう」としています。
 すると、上の漫画の事例では、これだけでは夫が配偶者以外の者と性的関係を結んでいるかどうか判らないので、他に不貞行為の証拠がなければ、裁判所においても不貞行為があったとは認定されない可能性があります。夫が浮気を認めない場合には、できるだけ証拠を集めましょう。
 なお、不貞行為があった場合には、他方の配偶者は、不貞行為を行った配偶者に対し離婚及び損害賠償を求めうるのみならず、不貞行為の相手方に対しても損害賠償請求をなすことができます。
posted by asunaro at 09:38 | 家庭の問題