2015年05月29日

あすなろ君,消滅時効を言えなくなる

ブログマンガ12回.jpg

質問
 私はあすなろ君といいますが,10年くらい前に金融業者から借入をした債務の支払を,最近になって求められました。そのとき,「払います」と言ったのですが,良くなかったでしょうか?

回答
 あすなろ君は,10年くらい前に借りた債務の支払を求められました。
 普通の金融業者さんからの借入であれば,最後の取引から5年(住宅金融支援機構や信用金庫等からの借入であれば10年)以上経過していれば,債務の消滅時効を援用して,債務の履行を拒むことができます。
 ちなみに,時効期間経過後であっても,「消滅時効を援用する」という意思表示をしなければ,債務の履行を拒むことはできません。

 ここで,時効期間経過後,時効のことを知らずに,「払います」と表明したあすなろ君の場合,どうなるのでしょうか。「払います」と言ったのに,後になって時効のことを知って,「やっぱり時効を援用します,だから払いません」と言って,支払を拒んで良いのでしょうか?

 この点,最高裁判所大法廷昭和41年4月20日判決民集20−4−702は,「債務につき消滅時効が完成した後に,債務者が債務の承認をした以上,時効完成の事実を知らなかったときでも,以後その完成した消滅時効の援用をすることは許されないと解するのが信義則に照らして相当である」と判示しています。
 つまり,時効の完成後,一旦債務を認めてしまったら,相手が支払を期待するので,その期待を裏切って時効の援用をするのは信義に反するという訳です。

 あすなろ君は,訴えられてしまいました。時効期間完成後に「払います」と述べた証拠が法廷に出されたら、負けてしまうかもしれません・・・。
以上
posted by asunaro at 10:39 | 日記