2016年02月15日

あすなろ君,就職内定を取り消される

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質問
 私はあすなろ君といいます。学生です。先日,就職活動先の会社から内定の通知がもらえました。うれしくて,その後は遊び回っていました。
 ですが,3月の終わりになって,その会社から内定取り消しの通知が来ました。
 今になって内定を取り消されても困ります。この内定取り消しは認められるのでしょうか。

回答
1 一般には,就職の内定によって,解約権留保付きの労働契約が成立すると解されています。
  よって,会社の内定取消は,通常の解雇あるいは留保された解約権の行使ということができます。労働契約法16条は,「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」と定めており,内定取り消しの場合もこれに準じて考えられます。

2 判例では,陰気な印象なので当初から不適格と思われたが,それを打ち消す材料が出るかもしれないという理由で採用内定としておいたところ,そのような材料が出なかったから採用内定を取り消したという事案で,社会通念上相当として是認することができず,解約権の濫用にあたり内定取消は無効と判断された例があります(最高裁昭和54年7月20日判決,民集33−5−582)。

3  しかし,漫画のあすなろ君には,@内定後就労開始予定日までに卒業できなかった,A就職活動時に履歴書に嘘を書いた,B内定後に飲酒運転で刑事罰を受けた等の心当たりがあるようです。これらの事由は,内定取消の理由として社会通念上是認できるとされる場合があります(Bは,職種によります)。

以 上
posted by asunaro at 10:31 | 労働問題

2015年05月29日

あすなろ君,消滅時効を言えなくなる

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質問
 私はあすなろ君といいますが,10年くらい前に金融業者から借入をした債務の支払を,最近になって求められました。そのとき,「払います」と言ったのですが,良くなかったでしょうか?

回答
 あすなろ君は,10年くらい前に借りた債務の支払を求められました。
 普通の金融業者さんからの借入であれば,最後の取引から5年(住宅金融支援機構や信用金庫等からの借入であれば10年)以上経過していれば,債務の消滅時効を援用して,債務の履行を拒むことができます。
 ちなみに,時効期間経過後であっても,「消滅時効を援用する」という意思表示をしなければ,債務の履行を拒むことはできません。

 ここで,時効期間経過後,時効のことを知らずに,「払います」と表明したあすなろ君の場合,どうなるのでしょうか。「払います」と言ったのに,後になって時効のことを知って,「やっぱり時効を援用します,だから払いません」と言って,支払を拒んで良いのでしょうか?

 この点,最高裁判所大法廷昭和41年4月20日判決民集20−4−702は,「債務につき消滅時効が完成した後に,債務者が債務の承認をした以上,時効完成の事実を知らなかったときでも,以後その完成した消滅時効の援用をすることは許されないと解するのが信義則に照らして相当である」と判示しています。
 つまり,時効の完成後,一旦債務を認めてしまったら,相手が支払を期待するので,その期待を裏切って時効の援用をするのは信義に反するという訳です。

 あすなろ君は,訴えられてしまいました。時効期間完成後に「払います」と述べた証拠が法廷に出されたら、負けてしまうかもしれません・・・。
以上
posted by asunaro at 10:39 | 日記

2015年01月06日

あすなろ君,自己破産?

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質問
 私はあすなろ君といいますが,借金して遊びに興じ,莫大な負債を抱えてしまいました。
 自己破産などの方法で債務を処理できますか?

回答
 あすなろ君が,これからまじめに暮らすのであれば,債務処理の方法は,なくはありません。
 多重債務を抱えるようになってしまった方の債務整理の方法の一つに,自己破産があります(破産法)。
 自己破産の手続においては,裁判所は,2段階の判断をします。すなわち,@破産手続開始決定と,A免責許可決定です。
 @破産手続開始決定は,債務者が支払不能・支払停止などの状況にあるときになされ,この決定によって債務者は「破産者」と呼ばれます。しかし,この段階では,まだ,債務が免責(債務がなくなること)されていません。@破産手続開始決定後,債務者にA免責許可決定があって,初めて,債務がなくなるのです。
 A免責許可決定をするために,裁判所は,さらに2段階の判断をします。まず,(1)法定の免責不許可事由がないことが明らかであれば,免責許可の決定をすることとされています(破産法252条1項)。しかし,免責不許可事由があっても,(2)債務者が反省しているなど,免責を許可することが相当であると思われる時は,免責許可の決定をすることができるとされています(破産法252条2項)。
 あすなろ君の場合は,借金で遊興にふけったということですから,破産法252条1項4号の免責不許可事由があります。よって,よほどの反省と更生が必要でありましょう。
 なお,法定不許可事由のない手続として,個人再生手続があります(民事再生法)。個人再生手続においては,債務がなくなるわけではなく,@100万円以上,A負債額の5分の1以上,B自己の所有する積極財産の額以上,の金額を,3年ほどかけて支払わなければなりません。免責不許可事由が著しい場合は,こちらの方法も検討に値するでしょう。
                                以  上
posted by asunaro at 10:47 | 財産の問題