2014年02月10日

あすなろ君、頭を冷やそう(Cooling Off)

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質問
 訪問販売の人に、高額の羽毛布団を買わされてしまいました。
 セールストークに乗せられてつい契約書に署名押印してしまいましたが、後になって、必要なかった気がしてきました。また、そもそも毎月の支払をすることができないのではないか、心配です。
 どうしたら良いでしょうか。

回答
 訪問販売については、特定商取引法という法律が定めを置いています。
 漫画の例は、業者が自宅に羽毛布団を売りに来たのであれば、特定商取引法2条1項1号の訪問販売に該当することとなります。
 そして、このような訪問販売においては、申込者(買主)等が契約の内容を明らかにする書面を受け取ってから8日以内であれば、クーリングオフの権利を行使できます。クーリングオフとは、直訳すると「冷却期間」みたいなものですが、契約後、冷静になって考え直してみると不要な契約であった場合、無条件で「書面により」「申込の撤回」(特定商取引法9条1項)ができる権利です。
 訪問販売のクーリングオフの要件は、次のとおりです。
 1 特定商取引法2条1項が規定する訪問販売であること
 2 申込・契約の対象が権利の場合は指定権利であること
 3 申込書面・契約書面を受け取ってから8日以内であること
 4 適用除外(法が定める例外)に該当しないこと
 訪問販売に引っかかったときは、今すぐ、お近くの弁護士か、消費者センターに相談してみましょう。

※参照条文
 特定商取引法2条1項1号
 「販売業者又は役務の提供の事業を営む者(以下「役務提供事業者」という。)が営業所、代理店その他の主務省令で定める場所(以下「営業所等」という。)以外の場所において、売買契約の申込を受け、若しくは売買契約を締結して行う商品若しくは指定権利の販売又は役務を有償で提供する契約(以下「役務提供契約」という。)の申込を受け、若しくは役務提供契約を締結して行う役務の提供」
 特定商取引法2条1項2号
 「販売業者又は役務提供事業者が、営業所等において、営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者その他政令で定める方法により誘引した者(以下「特定顧客」という。)から売買契約の申込を受け、若しくは特定顧客と売買契約を締結して行う商品若しくは指定権利の販売又は特定顧客から役務提供契約の申込を受け、若しくは特定顧客と役務提供契約を締結して行う役務の提供」
posted by asunaro at 15:16 | 財産の問題

2013年11月25日

あすなろ君、更新料を請求される

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質問
 賃借している部屋の家賃を、毎月支払っています。
 それとは別に、契約期間が終わるたびに、毎回「更新料」として大家さんからお金を請求され、支払っております。
 ところが、賃貸借契約書をよくみると、更新料の支払いについては書いていないようです。
 更新料も、支払わなければならないものなのでしょうか?

回答
 賃貸借関係については、民法や借地借家法などの法律が規定しておりますが、更新料についての定めはありません。したがって、更新料は、当然に支払わなければならないものというわけではありません。
 ここで、賃貸借契約書に更新料の定めを置いている場合には、当事者同士で決めたこと、契約の内容として拘束力があるので、特段の事情のない限り、更新料の支払義務を免れない場合が多いでしょう。
 しかし、賃貸借契約書に更新料の定めがない場合には、賃借人には更新料支払いの義務はありません。よって、支払を拒否できます。
 この場合、「更新料を払わないと契約を更新しませんよ」と大家さんから言われてしまったとしても、契約に定めのない更新料の支払いを拒否することは、契約更新拒絶の正当事由にならないので、大家さんはあなたを追い出すことはできないことになります。
 ただし、契約の更新をするとき、あなたが「更新料を支払います」と口頭でも約束してしまったような場合は、更新料の支払いは有効となりますので、ご注意ください。
posted by asunaro at 16:59 | 財産の問題

2013年10月29日

あすなろ君、相続する

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質問
 父が亡くなりました。
 父の息子である私たち兄弟3人のうち、私だけが借金を相続するように遺言書に書かれています。私だけが父の借金を支払わなければならないのですか?

回答
 なかなか厳しい遺言書です。もしこの遺言書通りに3兄弟が相続したとすると、以下のようになります。
 まず、質問のような遺言書があったとしても、債権者はあすなろ君以外の相続人に対し1円も請求できないわけではありません。債権者は、あすなろ君に対し、法律で決められた相続の割合に応じて(今回は1/3です)請求し、他の相続人に対し残りの2/3を請求してよいことになります。
 その理屈は、以下のとおりです。
 何人かいる相続人のうち、1人だけに借金などの債務を単独で相続させることが許されるなら、支払能力のない人に債務を集中することもあり得ることとなります。そうなれば、被相続人の債権者は、相続人からきちんと支払ってもらえるかわからない、極めて不安定な地位に置かれることとなります。法は、このような勝手を許してはいません。
 すなわち、大審院昭和5年12月4日付決定は、被相続人の債務は、債権者との関係では、相続分の割合で相続人の間に分割されるとしています。よって、債権者は、遺言書や遺産分割協議の内容にかかわらず、各相続人に対し、法定相続分の割合で弁済を請求できます。
 あと、遺留分の請求(民法1028条)ができるとか、相続放棄(民法915条)した方がよいとかいうことも言いたいのですが、それはまたいずれお話ししたいと思います。
posted by asunaro at 12:00 | 家庭の問題